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未払労働債務(請求資料)

未払残業代を検討する上で、どのような資料を対象会社から入手する必要があるのでしょうか。資料によっては対象会社に存在しない場合もありますが、一般的に以下のような資料を要求することになります。

(1)従業員構成に関する資料

対象会社の従業員の構成を把握することは、対象会社の全貌を把握する上で極めて重要です。これらの構成は、できる限り細分化されているに越したことはありませんが、基本的に対象会社において管理している様式に寄ることになります。

一般的には、正社員、契約社員、アルバイト、派遣社員、出向社員等の人数、これらの従業員の配置部署、年収、勤続年数等の情報が記された資料となります。これらの資料には従業員の年収等が記載されており、対象会社内においても機密性が高いため、取扱いには十分注意する必要があります。

(2)就業規則、賃金規程等の各種規程

就業規則や賃金規程という各種規程は、対象会社の従業員の就労関係を把握する上で重要な資料となりますが、未払残業代を算定する上でも重要な資料となります。まずは、これらの資料を分析し、就労環境を把握したうえで未払残業代の算定に着手することになります。

(3)労使協定書・労働協約書

使用者と労働組合や従業員代表との間で締結している労使協定書については、対象会社の就労状況を把握する上で必要な資料となるため、全て提出してもらう必要があります。また、労働協約や労働組合との合意文書についても労使間の就労状況を拘束するため、全て提出してもらわなければなりません。なお、労働協約は就業規則よりも優先的に適用されるため、両者の間で矛盾した取り決めがなされている場合には、労働協約を優先的に適用しなければなりません。

(4)雇用契約書、派遣契約書等の雛形

雇用契約書は、統一的な雛形を用いていることが通常です。もっとも、数年ごとに雇用契約書の改定がなされることも往々にして見られ、単に最新の雛形だけを把握するだけでは不十分な場合もあります。そのため、過去に遡っていくつかの雇用契約書を提出してもらう必要があります。

また、派遣契約書や出向契約書についてもいくつかのサンプルを提出してもらい、同一の雛形が用いられているか確認する必要があります。

(5)直近数カ月の給与明細

実際にタイムカードによって算定される賃金を適切に支払っているのかを確認するため、直近数か月分の給与明細を取得する必要があります。タイムカードで打刻された時間から、残業申請がなかった労働時間を控除して労働時間を算定していることもあるため、対象会社における給与計算の仕組みについて正確に把握するために給与明細を取得する必要があります。

また、未払残業代を算定する際にも給与明細が必要となります。もっとも、従業員数が数名である場合や、システムによってオートマチックに未払残業代が算定できる場合でなければ、全従業員の過去2年分の未払残業代を算定することは極めて困難です。なお、2年分とは、賃金債権の消滅時効期間が2年間であることに基づきます(労働基準法115条)。そのため、法務デュー・デリジェンスでは、一定の役職や給与テーブルから数名のサンプルを抽出し、その者の過去数か月の未払残業代を算定することによって、全従業員の未払残業代の概算を算定することが一般的です。この場合であっても、未払残業代の季節的変動がある場合、たとえば夏季や3月に未払残業が多く発生するなどの事情がある場合には、これらの季節的変動も考慮に入れてサンプルを抽出する必要があります。

(6)直近数カ月のタイムカード

対象会社によっては、タイムカードによって労働者の時間管理を行っている場合もあれば、パソコンの勤怠システムによって管理している場合もあります。これらの直近数カ月の資料を入手し、給与明細と照らし合わせて未払残業代を算定することになります。

もっとも、タイムカードに打刻された時刻や勤怠システム上の時刻が、必ずしも正確な労働時間を示していないこともあり得ます。たとえば、労基署対応のため、タイムカードの打刻を早めに行わせ、それからサービス残業を行わせている場合なども事実として存在します。そのため、これらの資料と実際の労働時間との間に齟齬がないか、インタビューやその他の資料により、適切に把握する必要があります。

なお、タイムカードが存在しないなど、労働者の労働時間管理を全く行っていない会社というものも、中小企業にはある程度存在します。そのような場合であっても、可能な限り未払残業代の概要把握を行う必要があるため、従業員のメール送信履歴や、ビルの警備システムの開始時刻や終了時刻などの資料をもとに、できる限り客観的に未払残業代を把握しなければなりません。

(7)過去に未払残業代の請求を受けた際の資料

現実として未払残業代が存在していても、実際に未払残業代の請求が会社になされることはあまりありません。そもそも、未払残業代が発生していることを知らない従業員もいますし、たとえ未払残業代の存在を知っていたとしても、会社に請求することは気が引けると考える従業員が多いことも事実だからです。

とはいえ、全ての未払残業代が請求されないというわけではなく、ある程度の従業員を抱えている会社であれば、これまでに未払残業代請求を受けたことがあるのが通常です。未払残業代請求がなされる場合、内容証明等で請求がなされる場合もあれば、労働基準監督署から呼出を受ける場合もあります。また、労働審判申立や訴訟提起される場合も考えられます。

いずれの場合であったとしても、これらの書面を閲覧することによって、多くの情報を得ることができます。対象会社の労働時間管理上の問題や、対象会社が残業代対策として採用している制度が、裁判所でどのように判断されたのかという事情も把握することができます。その他、対象会社において実際に請求される未払残業代の割合も把握することができ、今後実際に請求を受ける可能性のある金額を推測することも可能となります。

以上のような理由から、過去の未払残業代請求を受けた際の資料は、必ず入手する必要があります。

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