Skip to content(本文へジャンプ)

  1. HOME
  2. M&Aの知識
  3. 財務DDの基礎知識
  4. ファイナンスに関する注意点

ファイナンスに関する注意点

ファイナンスに関する取引は、一般的な金銭消費貸借に始まり、社債、デリバティブ取引、セール・アンド・リースバックなど多種多様な形態が存在しますが、その大半は金銭消費貸借となります。そこで、ここでは一般的な金銭消費貸借契約を念頭に置いて、その注意点について説明を行います。

ファイナンスに関する重要な検討事項は以下の通りとなります。

  1. ① 返済額・返済期限
  2. ② 保証債務
  3. ③ 期限の利益喪失条項
  4. ④ コベナンツ条項

①返済額・返済期限

借入を行った金銭につき、約定通り返済がなされているか否かは、真っ先に確認すべき重要事項となります。仮に、約定通り返済がなされていない場合には、金融機関から期限の利益を喪失され、一括返済を求められるおそれもあります。また、リスケジュール(リスケ)を実施している場合には、金融機関との間でどのような約定となっているのか、十分現状把握を行う必要があります。今後も金融機関がリスケに応じてくれるか否かは不確定な事由だからです。

ファイナンスが約定通り返済されているか否かという情報は、財務デュー・デリジェンスが主となり検討することになります。そのため、この分野においては、法務デュー・デリジェンスが財務デュー・デリジェンスから情報提供を受けた方が効率が良いと考えます。

とはいえ、資金繰りに関する問題は、企業の存続にかかわる極めて重要な問題であるため、財務デュー・デリジェンスに任せっきりにすることなく、法務デュー・デリジェンスにおいても独自に情報収集を行い、その上で財務デュー・デリジェンスと擦り合わせを行うべきでしょう。一般的に財務デュー・デリジェンスの方が資金繰りに関する数値を正確に把握していますが、法務デュー・デリジェンスが検討した書面を財務デュー・デリジェンスが入手していないというおそれもあるため、両者の緊密な情報共有が重要となります。

②保証債務

金融機関の借り入れと同時に代表者等が連帯保証人となっている場合、M&Aにより経営主体が変更になることに伴い、借主の地位を切り替え、連帯保証人についても解消されることが一般的となります。そのため、この切り替えが問題なく実行できるかという点につき、M&Aの実行前に金融機関に打診を行う必要があります。与信の問題等により、借主の地位の切り替えが実行できない場合、M&A自体が頓挫することになりかねませんので、最大限の配慮を要する事項となります。

一方で、金融機関とのファイナンス契約のように、容易に連帯保証の事実を把握できるものと異なり、対象会社が個別に関係会社等の債務を保証している場合には、発見が困難な場合があります。仮にデュー・デリジェンスの過程で判明しなかったとしても、買収契約における表明保証条項においてフォローがなされる可能性もあります。しかし、表明保証条項違反では救済が困難な場合も想定されますので、可能な限り対象会社の連帯保証契約はデュー・デリジェンスにおいて把握しておきたいものです。対象会社に対するヒアリング等によって把握不可能だったとしても、決算書上の不可解な金銭支払いの動きから把握できることもありますので、全ての資料を多角的に検討して発見するよう努めるべきです。

なお、主債務者の返済可能性に疑問が生じた場合、債務保証損失引当金等を計上することにより、純資産額が減少することも考えられます。修正後純資産額は、買収対価を決定する際に重要な基礎情報となりますので、この観点からも隠れた保証債務を発見することは重要事項となります。

③期限の利益喪失条項

分割払いの融資契約には、必ず期限の利益喪失条項が設けられています。期限の利益喪失条項とは、支払遅延など一定の事由が生じた場合に、借主が分割で支払えば良いという権利(期限の利益)を喪失させ、貸主が残金全額の一括返済を求めることができるという条項を意味します。具体的には、以下のような条項です。

第●条(期限の利益喪失)

乙について次の各号の事由が一つでも生じた場合には、甲からの何らの通知催告がなくても乙は期限の利益を失い、直ちに元利金を返済する。

  1. 本契約の支払を1回でも滞納したとき
  2. 差押、仮差押、仮処分、強制執行、担保権の実行としての競売、租税滞納処分その他これらに準じる手続が開始されたとき
  3. 破産、民事再生、会社更生又は特別清算の手続開始決定等の申立がなされたとき
  4. 自ら振り出し又は引き受けた手形もしくは小切手が1回でも不渡りとなったとき、又は支払停止状態に至ったとき
  5. 合併による消滅、資本の減少、営業の廃止・変更又は解散決議がなされたとき
  6. その他、資産、信用又は支払能力に重大な変更を生じたとき

期限の利益喪失条項に違反している場合には、貸主から一括返済を求められるおそれがありますので、貸主との間でどのような話し合いがなされているのか十分把握する必要があります。貸主との間で当分の間一括返済を求められないこととされている場合には、書面もしくは金融機関担当者の言質を得るべきでしょう。

また、契約書によっては、株主構成の変更があった場合などに期限の利益を喪失させるという、チェンジ・オブ・コントロール条項の内実を有した期限の利益喪失条項が規定されていることがあります。このような条項が存在する場合には、事前に金融機関から期限の利益を喪失させない旨の同意書を得ておく必要があります。

④コベナンツ条項

コベナンツ条項(誓約条項)とは、借入れを行うに際して、一定の行為を行うこと又は行わないことを義務として課し、これに違反した場合に期限の利益を喪失させるなどのペナルティーを定める条項を意味します。基本的には、期限の利益喪失条項と同じなのですが、その内容が一般的な期限の利益喪失条項とは異なっている点に特徴があります。

コベナンツ条項には様々なバリエーションが存在するのですが、典型的な例としては以下のようなものがあります。

(1)財務制限条項

一定の財務状態を維持する規定であり、純資産額を一定限度以上に維持する義務、有利子負債に関する義務、自己資本比率に関する義務、経常利益に関する義務など、決算書情報に関連する指標を用いたコベナンツ条項です。

(2)劣後債務弁済禁止条項

複数の借入れの内、優先的借入れと劣後的借入れを分類し、優先的借入れの返済が終わるまで劣後的借入れの返済を禁じるというコベナンツ条項です。関係会社に対する借入れや代表者からの借入れなどが劣後的借入れと分類されるケースが多く見られます。

(3)資産譲渡制限条項

一定の資産の譲渡を禁止するコベナンツ条項です。対象会社に極めて重要な資産(高額機械等)がある場合、当該資産を譲渡してしまうと、対象会社の企業価値が激減することが想定されます。このような事態に陥らないように制限するための条項です。

(4)報告・情報提供義務条項

取締役の交代や信用状態の悪化などが生じた場合に報告義務を課し、定期的に決算書等の情報提供を義務付けるコベナンツ条項です。

(5)事業維持条項

対象会社において現在実施されている事業を維持継続していくことを義務付けるコベナンツ条項です。このような条項が存在する場合には、M&Aによって当該条項に抵触することのないよう配慮する必要があります。

以上のように、コベナンツ条項は、通常の期限の利益喪失条項に加えて、様々な義務や誓約を課する条項となります。もっとも、金融機関から融資を受ける場合にコベナンツ条項を設けられることは稀です。金融機関との契約にこのような条項が存在する場合には、対象会社が経営難等に陥っているおそれを窺うことができます。そのため、個々のコベナンツ条項に抵触しないよう配慮することはもとより、金融機関との契約においてコベナンツ条項が設けられた経緯についてヒアリング等により入念に調査する必要があります。

セミナー情報

2015年08月28日(金)
13:00~17:00
M&Aにおける『知的財産実務』の勘所
2015年08月07日(金)
13:00~17:00
専門家を使いこなすための『M&A』の知識
終了いたしました 2015年03月06日(金)
13:00~17:00
専門家を使いこなすための『M&A』の知識

ページの先頭へ