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契約書の重要検討事項

契約書に対して法務デュー・デリジェンスを実施する際に特に重視して検討すべき事項は、以下の4つとなります。前述したように法務デュー・デリジェンスにおける契約書チェックは、既に締結済みの契約書が対象となります。そのため、各契約類型に応じた特殊な検討事項もあるものの、微細な点には時間をあまり割かず、以下のような重要検討事項に着目して法務デュー・デリジェンスを行うことが一般的です。

  1. ① チェンジ・オブ・コントロール条項
  2. ② 競業禁止条項
  3. ③ 独占的権利条項
  4. ④ 違約金条項

①チェンジ・オブ・コントロール条項

チェンジ・オブ・コントロール条項とは、会社の経営主体等に著しい変更が生じた場合に契約解除を認める規定を意味します。条項例としては色々なバリエーションがあるのですが、以下のように解除条項の一項目として挙げられていることが多く見られます。

第●条(解除)

甲又は乙が以下の各号のいずれかに該当したときは、相手方は催告及び自己の債務の履行の提供をしないで直ちに本契約の全部又は一部を解除することができる。なお、この場合でも損害賠償の請求を妨げない。
......

⑥株式の過半数の譲渡、事業譲渡又は合併等の組織変更により、経営環境又は資本環境に著しい変化が生じたとき
......

契約書内にこのようなチェンジ・オブ・コントロール条項が存在する場合、M&Aが実施された後、相手方から契約の解除を主張されるおそれがあります。仮に、当該契約が対象会社の主要な業務にかかわるものである場合、買主としては万が一にも解除されるわけにはいきません。

そのため、チェンジ・オブ・コントロール条項が発見された場合、その契約の重要性を検討したうえ、重要であるとの判断がなされた場合には、M&A実施後も当該契約が解除されないよう対処する必要があります。具体的には、対象会社が事前に契約の相手方から、当該条項を削除する旨の覚書を入手したり、今回予定されているM&Aについては解除権を行使しない旨の合意書を取得するという方法が考えられます。また、事前に契約の相手方にM&Aの事実を伝えることが憚れる場合には、買収契約締結後速やかに、契約の相手方からこれらの書面を取得することになります。そして、一定期間内にこれらの書面を取得することをM&A実施の前提条件とすることも考えられます。

②競業禁止条項

競業禁止条項とは、一定期間、一定地域において、特定の業務と競業する内容の業務等を行うことを禁止する状況を意味します。条項例としては、以下のように概括的に規定される場合もあれば、競業する業務の詳細を規定する方法や、代表者が競業会社の役員や従業員になることなどを禁止する場合も見られます。

第●条(競業禁止)

乙は、本契約有効期間及び本契約終了時から3年間は、日本国において、甲と競合する第三者との間で本件業務と同様又は類似の取引を行ってはならない。

契約書にこのような競業禁止条項が存在している場合、今後の事業展開の制約となるおそれがあるため、注意が必要となります。また、現時点において買主が当該競業禁止条項で禁止されている競業を行っている場合には、M&Aを実施することにより、当該条項に違反することになりかねません。その他、当該競業禁止条項を締結している相手方以外の競業相手と、今後取引を行う可能性がある場合には、当該競業禁止条項違反となるおそれがあります。

このように、現在及び将来的な競業の可能性を検討し、当該競業禁止条項が問題となるおそれがあると判断した場合には、この条項に何らかの手当てを施しておく必要があります。具体的には、対象会社が事前に契約の相手方から、当該条項を削除する旨の合意書を取得するという方法が考えられます。また、このような合意書を取得できない場合には、将来的に当該条項に違反するおそれや、賠償請求の可能性、及び事業計画に与える影響性などを考慮に入れて、M&Aを実施するか否かにつき判断することになります。

③独占的権利条項

独占的権利条項とは、契約当事者の一方に独占的な権利を与える条項を意味します。以下の例のように直接的に独占的権利を認める場合もあります。

第●条(独占的販売権)

甲は、日本国内において、本件商品を独占的に販売できる権限を有する。

また、一定のエリアについて競合店舗を設置されないという形で、間接的に独占的権利を認めるケースも存在します。

第●条(テリトリー)
  1. 本件店舗の商圏(以下「本件テリトリー」という。)は、通行人の流れ及び店舗の広さ等を総合的に考慮した上で、甲乙協議により決定し、別紙として本契約書に添付する。
  2. 甲は、本契約期間中、本件テリトリーにおいて、乙以外の加盟店又は甲の直営店を設置しない。

いずれの場合であっても、当該契約の重要性や、独占的権利の範囲によって、対象会社の将来の事業契約に影響を与える可能性があります。そのため、独占的権利条項が契約書内に存在する場合には、その重要性について慎重に検討する必要があります。

④違約金条項

違約金条項とは、契約当事者が契約違反を行った場合等に、損害額の立証を行うことなく一定の金額の賠償金の支払いを余儀なくされる条項を意味します。たとえば、以下のような条項です。

第●条(違約金)

甲が第△条に違反したことにより乙に損害を与えた場合、損害額の立証を要することなく金100万円を損害金として支払うものとする。

損害賠償請求を行う場合には、請求を行う者が、事実と損害の因果関係や損害額の立証を行わなければなりません。しかしながら、裁判において損害額を立証することは、通常困難な作業となります。たとえば、仮に契約違反の事実に伴って、大手取引先との契約が終了することになったとしても、そもそも契約違反の事実によって大手取引先との契約が終了したのか争われるおそれがあります。また、大手取引先との契約によって将来どの程度の収益を得ることができたのかということについては、将来的な事項であるため、正確に予測することはできません。このように、たとえ契約違反の事実があったとしても、損害額立証の困難性を考慮して、損害賠償を求めて訴訟提起することを断念するケースは、実は少なくありません。

しかし、違約金条項により具体的な金額を記載してしまうと、原則として損害額の立証が不要となります。これを法律用語で「賠償額の予定」と言います(民法420条)。賠償額の予定が存在すると、訴訟を提起したとしても賠償額の立証の手間を回避できるため、契約違反を行った際に、損害賠償請求訴訟が提起されるおそれが高まります。また、実際に訴訟提起されてしまうと、契約書に規定されている違約金額の賠償金の支払いが命じられるおそれが高くなります。そのため、契約書上に違約金条項が存在する場合は、存在しない契約と比較すると、契約違反の際の危険性が高い契約として注意が必要となります。

なお、違約金条項で予定されていた金額があまりに高額である場合には、その賠償予定額は公序良俗違反(民法90条)などにより、無効と判断されることがあります。そのため、たとえ違約金条項が契約書内に存在するとしても、その金額の妥当性についても考慮に入れて、契約書の危険性判断を行うことになります。

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2015年08月28日(金)
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