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対象会社が上場会社である場合の注意点

対象会社が上場会社の場合には、上場会社として多くの規制をクリアしていることによるメリットと、規制があることなどによるデメリットが存在します。対象会社が上場会社の場合には、これらの点に留意してデュー・デリジェンスを実施する必要があります。

以下、メリットとデメリットに分けて説明します。

メリット

① 有価証券報告書、監査済財務諸表の存在

上場会社では、監査法人による監査を受けた財務諸表が存在し、また対象会社の会社概要が詳細に記載された有価証券報告書が存在します。また、その他のリリース資料などもEDINETやTDnet等を通じて公開されています。そのため、現地調査を実施する前段階から、対象会社に関する多くの情報を入手することができます。

上場企業は、非上場企業に比べると、一般的に規模が大きく取引量も多い傾向にあります。一方で、社内のコンプライアンスや内部統制のレベルが高い傾向にあります。また、上記のような公開資料を活用することで、効率的にデュー・デリジェンスを実施することも可能になるというメリットが存在します。

② 株式譲渡の履歴を追う必要性がないこと

一般的に、株券発行会社では過去に遡って株式譲渡の履歴を追う必要があります。もっとも、上場会社では、株式上場時に証券会社等を通じて一定の審査を受けており、原則として株主名簿に記載されている情報が正しいものとして扱うことができます。そのため、株券発行会社の非上場会社で問題となりがちだった株式譲渡の履歴という点は、対象会社が上場会社の場合にはデュー・デリジェンスの対象外とすることが可能となります。

とはいえ、対象会社が非上場会社の子会社や関連会社株式を有していることは往々にして見られるため、この点について株式譲渡の履歴を検討する必要が生じることはあります。

デメリット

① 公開買付け(TOB)の必要性

上場会社を株式譲渡の形態で買収する場合、原則としてTOBの方法によることになります。TOBとは、不特定かつ多数の者に対し、公告により株券等の買付等の申込み又は売付け等の申込みの勧誘を行い、取引所金融商品市場外で株券等の買付け等を行う制度をいいます(金融商品取引法27条の2第6項)。分かり易くいうと、上場会社等の株式を大量に買い付ける場合には、「あなた達からも1株当たり○○円で購入します」と、一般投資家からも同等の条件で購入するよう宣言しなければならないという制度です。

株式譲渡は原則として自由に行うことができるとされていますが、多くの一般投資家が知らないところで、相対取引などにより大量保有者が変更する場合、事情を知らなかった一般投資家が不測の損害を被ることになりかねません。そのため、一定の要件を満たす場合には、取引内容を一般投資家にも公開して、平等な取引を実施しなければならいとしたのです。

このように、TOBを実施する場合、非上場会社の株式譲渡とは異なり、一般投資家からも株式の購入を行わなければなりません。また、TOBを実施する場合には、その対応手続のため証券会社等に対して多額の手数料を支払う必要が生じます。そのため、これらの負担も考慮に入れてM&Aスキームを検討する必要があります。

② 株主総会決議の困難性

株式譲渡以外のスキーム、たとえば合併や会社分割などを実施する場合であっても、対象会社が上場会社である場合には、特別な配慮が必要となります。上場会社は、非上場会社と異なり、容易に臨時株主総会を行うことができません。多数の株式に招集通知を発送する費用負担や手間暇なども考慮に入れなければなりません。そのため、株主総会決議が不要になるようスキーム変更したり、定時株主総会に合わせて決議を行うなどの工夫が必要となります。

③ インサイダー取引

対象会社が上場会社である場合、デュー・デリジェンスの過程における資料開示によって、未公表の重要事実(金融商品取引法166条2項)を知ってしまった場合に、デュー・デリジェンスを実施した買主による株式取得がインサイダー取引に該当してしまうという問題があります。このような場合には、原則として対象会社において当該事実を公表してもらうよう取り計らう必要があります。

また、対象会社にM&Aが実施されるという情報は、対象会社の株価に大きな影響を与える可能性が高いものであり、投資家からすれば極めて魅力的な情報となります。そのため、当該情報に関与できる者の範囲を限定するなど、情報管理を徹底する必要があります。これは、売主や買主に限らず、デュー・デリジェンスメンバーについても同様に徹底した情報管理が求められることになります。

④ 表明保証を得ることが困難

非上場会社の株式譲渡を行う場合、買収契約において、売主は一定事項が正しいことを表明保証し、その表明に違反があった場合には損害賠償等を行う旨の規定を設けます。たとえば、デュー・デリジェンスにおいて開示した決算書等が適正に作成されたものであることや、既に開示したもの以外の簿外債務が存在しないことなどが表明保証条項の対象とされます。

もっとも、対象会社が上場企業の場合、このような表明保証を一般投資家から得ることはできません。そのため、対象会社に予想外の瑕疵が存在した場合、その損害の補償を受けることは、原則としてできません。従って、対象会社が上場会社である場合には、事後的に補償が得られないため、徹底的にデュー・デリジェンスを実施する必要があることになります。

しかし、対象会社に大株主が存在し、当該大株主との間で表明保証条項を含めた株式譲渡契約を締結できるのであれば、この点のリスクは一定程度弱まることになります。

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