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法務DDの限界(資料開示)

デュー・デリジェンスにおける資料開示は、一般的に各デュー・デリジェンスプレイヤーが要求資料リストを作成し、このリストに基づいて実施されることになります。この要求資料リストは、デュー・デリジェンスの初期段階で作成されることが一般的であり、対象会社にどのような資料が存在するのか分からない状況で作成されます。そのため、対象会社に存在しない資料を要求することは往々にして見られます。しかし、この場合には「存在せず」という回答がなされるだけで、それほど問題とはなりません。

一方で、要求資料リストに重要な資料の記載が漏れていた場合、原則として、対象会社が自発的に要求されていない資料を開示することはありません。そのためこの場合は、重要な資料が調査対象から漏れてしまうという深刻な問題が生じます。

もちろん、法務デュー・デリジェンスメンバーもこのような深刻な問題が生じないように、一般的なデュー・デリジェンスで要求する資料は、網羅的に要求資料リストに計上しています。また、対象会社の業態に応じて、要求資料リストをカスタマイズすることによって、重要な資料の要求が漏れないように細心の注意を払うことになります。

しかしながら、法務デュー・デリジェンスメンバーは、法務デュー・デリジェンスの専門家ではあるものの、対象会社の業界の専門家ではありません。そのため、業界常識からすれば当然要求すべき資料や、当然対象会社に存在しているはずの資料の要求が漏れてしまうリスクがあることは否定できません。

これまで、デュー・デリジェンス依頼者が、法務デュー・デリジェンスプレイヤーが作成する要求資料リストを精査し、これに対し重要な資料開示が漏れているなどの指摘をすることは、通常見られませんでした。これは、『専門家が行っているデュー・デリジェンス手続の最中に素人が口を出すべきでない』という心理的抑圧が原因だと思います。しかし、既に述べましたように、法務デュー・デリジェンスプレイヤーは対象会社の業界の専門家ではないため、法務デュー・デリジェンスプレイヤーが作成した要求資料リストには、重要な資料の要求漏れという欠陥が存在するおそれがあります。そのため、できる限りデュー・デリジェンス依頼者も法務デュー・デリジェンスプレイヤーの要求資料リストを精査し、「他にもこのような資料があると思う」などの意見を告げた方が良いと思います。

たとえ、買収を予定している対象会社の業界が、デュー・デリジェンス依頼者にとって新規事業であったとしても、買収を検討する段階にその業界事情を可能な限り調べているはずです。そのため、デュー・デリジェンス依頼者の方が法務デュー・デリジェンスメンバーよりも、対象会社の業界常識に精通していることが一般的だと考えられます。

また、対象会社の従業員も、実際に買収され、デュー・デリジェンスの対象となるという経験は初めてであることが通常です。そのため、要求資料リストで開示を要求されている資料が、果たしてどのような資料を指しているのか分からないという事態が生じることも往々にして見られます。このような場合、仮に資料のタイトルが異なっていたとしても、法務デュー・デリジェンスメンバーが要求していた資料であることも起こり得ます。

たとえば、法務デュー・デリジェンスメンバーが「業務委託契約書」を要求していた場合に、対象会社に内容は業務委託契約であるものの「業務提携書」というタイトルの契約書が存在していても、この契約書が提出されなくなるおそれがあります。

なお、一般的に対象会社が積極的に資料開示に応じることはありません。対象会社の従業員は、通常業務の傍らでデュー・デリジェンス対応を行っていることが一般的であり、できる限り手間暇を減らしたいと考えているからです。また、売主としては、買収価格を減額する可能性のある資料を開示したくないと考えることが一般的だからです。そのため、要求資料リストで要求されている資料タイトル名が異なっているだけで、「資料なし」という回答を行ってくることも往々にして見られます。

この場合、法務デュー・デリジェンスメンバーとしても本当に資料が存在しないのか確認することになります。しかし、業界常識からして当該資料が存在していないことは、想定できないなどの事情があれば、そのことを積極的に法務デュー・デリジェンスメンバーに告げる必要があります。法務デュー・デリジェンスメンバーとしても、対象会社の従業員が「ないです」と回答しているのに、「そんなはずはない」と反論するためには、何らかの根拠が必要になるからです。

このように、法務デュー・デリジェンスの資料開示には一定の限界が存在します。しかし、その限界は、デュー・デリジェンス依頼者のフォローによって縮小できる可能性があります。そのため、法務デュー・デリジェンスには上記のような限界があることを認識し、積極的にフォローを行って欲しいと思います。このことは、結果として充実した法務デュー・デリジェンスの報告書に繋がり、デュー・デリジェンス依頼者自身の利益を守ることに繋がるからです。

セミナー情報

2015年08月28日(金)
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M&Aにおける『知的財産実務』の勘所
2015年08月07日(金)
13:00~17:00
専門家を使いこなすための『M&A』の知識
終了いたしました 2015年03月06日(金)
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