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マーケット・アプローチの基礎知識

(1)市場株価方式

市場株価方式とは、その名のとおり対象企業が上場企業である場合において、市場における株価を基礎として、企業価値評価を行うという手法です。市場における株価を使用することから、恣意性が介入する余地がなく、非常に客観性の高い評価手法であるということができます。しかし、市場における株価が存在するのは上場企業に限られるため、非上場企業に対しては適用することができず、その点からいえば、使用頻度は極めて限定的であるといえます。

(2)マルチプル方式

①評価手法の概要

マルチプル方式は、類似の上場企業の株価を参考にして対象企業の株価を算定する方法で、類似会社比準方式や倍率方式などと言われることもあります。

具体的には、まず類似の上場企業を選定します。そして、選定した上場企業のEBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization:税金、利払い、償却を考慮する前段階の利益を意味し、営業キャッシュ・フローと近い意味を持つ指標のこと)などの財務指標と企業価値等との倍率を算出します。最後に、対象企業の同じ財務指標に当該倍率を乗じることによって、対象企業の企業価値を算定するという方法です。

たとえば、類似上場企業のEBITDAが100で企業価値が2,000である場合、EBITDA倍率は20倍となります。対象企業のEBITDAが30の場合、これにEBITDA倍率20倍を乗じることで、対象企業の企業価値は600と評価されることになります。

②類似上場企業の選定

簡単にいえば、以上がマルチプル方式による株価算定の概要です。もちろん実際には考慮すべき事項がいろいろとあります。まず、類似上場企業としてどのような企業を選定するのかというのが最も大きなテーマです。マルチプル方式は、類似上場企業の選定が適切に行われれば、あとは比較的客観性を確保しやすい方法であるといえるのですが、そもそもどのような企業を類似上場企業として選定するのかについては、恣意性が入りやすいという側面も否めません。類似上場企業の選定に当たっては大きく2つのポイントがあります。

1つは選定する類似上場企業の数です。選定する類似上場企業は1社である必要はありません。というよりも、通常は1社ではなく、複数の企業を選定することにより、あまり偏りがでないようにします。一般的には、類似性が極めて高い企業が存在する場合には、2~4社程度と比較的少数の企業を選定するにとどめるケースもありますが、一方で、類似性が高い企業がなかなか見つからない場合は5~10社程度といった形で、比較的多くの企業を選定するといった対応をとります。

またもう1つのポイントは、そもそも何をもって類似企業と考えるのかということです。基本的には同じ業界で類似した事業内容の企業を選定するのが一番良いのですが、同じ業界で似たような事業であっても、事業規模があまりにも違いすぎる場合には、参考にしにくいケースもあります。ですから、事業内容だけでなく、事業規模や、場合によっては地域性、事業戦略の類似性なども加味しながら、複数の企業を類似企業の候補として幅広く洗い出した上で、最終的に類似企業として採用する企業を数社に絞り込んでいくことになります。

③使用する財務指標の決定

どのような財務指標を使用するのかによって、評価額は変わってくることになります。一般的に使用される財務指標としては、EBITDA、EBIT、売上高、当期利益、純資産額などがありますが、実務においてはEBITDA倍率が使われるケースが非常に多いといえます。

なお、マルチプル方式で算定する価値が事業価値、企業価値、株主価値のいずれになるかは、倍率を算定する際に、どの数値を基礎として倍率を算定したかによって変わってくるので注意が必要です。たとえば、EBITDA倍率を算出する場合は、一般的に類似上場企業の株式時価総額に有利子負債を加算して企業価値を算出した上で、EBITDA倍率を算出することになるため、この倍率を用いて算出される価値は企業価値となります。一方で、類似上場企業の株式時価総額(株主価値)をもとにPBR(株価純資産倍率)を算出した上で、当該PBRを対象企業の純資産額に乗じる場合には、算出される価値は株主価値になるわけです。このように、どの指標を用いるかによって、一義的に算出される価値が変わるということを知っておかなければなりません。

④マルチプル方式の使用局面

マルチプル方式は類似上場企業の選定が行いやすい場合には、後に説明するインカム・アプローチと比較して客観性を確保しやすい評価手法であるといえるため、適した方法であると言えます。しかし、類似のビジネスを行っている企業が存在しないような極めて新規性の高いビジネスや、非常にニッチなビジネスの場合には、複数の類似上場企業を選定することが困難になるため、マルチプル方式の採用は適切ではありません。仮にかろうじて1社だけ類似上場企業が見つかったとしても、1社のみの類似上場企業を基礎として算出された評価額はマルチプル方式としては説明しにくい面があるため、算定したとしても参考情報にとどめる程度になります。

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