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棚卸資産

①棚卸資産の実在性と在庫管理

売掛債権と同様に、棚卸資産についてその実在性を検証するのは、限られた条件のもと行う財務デュー・デリジェンスにおいては、実のところ困難であるといえます。

財務諸表監査などの場合には、監査を行う公認会計士が自ら、企業の実地棚卸に立ち会い、自らも抜き取り検査を行う等して、実地棚卸が適切に行われているかどうかを、生でみて確かめるということを行うのですが、財務デュー・デリジェンスの場合には、基準日時点までタイムスリップするわけにはいきませんから、同じように検証することは不可能です。

そこで、代わりにどのようなことを行うかというと、まずは対象会社がどのようなプロセスで在庫の数量と単価を確定しているかを質問等によって把握します。その上で、対象会社が基準日時点で行った実地棚卸の記録を閲覧します。日々の在庫管理や実地棚卸が適切に行われている企業の場合には、実地棚卸において帳簿残高と実地残高の差異が膨大になることはありませんし、一部について差異が生じた場合であっても、その差異理由がきちとんと調査されており、合理的な差異であることが確認できるものです。反対に、このような状況にない場合には、日々の在庫管理または期末における実地棚卸手続きに何らかの不備があると考えられ、貸借対照表に計上された棚卸資産残高の信憑性もやや薄らいでしまうことになります。

こういった在庫管理の体制は、買収後においても極めて重要です。非上場企業の場合には、在庫管理体制が必ずしも適切に整備されていないケースも多く見受けられます。対象会社が買収後において連結子会社となる場合には、親会社の連結財務諸表を作成する上で、子会社の在庫確定プロセスが重要なテーマになることもあり、監査法人からも指摘を受ける可能性があります。指摘だけならまだいいのですが、在庫ボリュームがかなり大きいにも関わらず、適切に在庫確定ができないようなずさんな管理体制の場合には、最悪パターンとして、監査意見が予定どおりに出ないということにもつながりかねません。

在庫管理はたしかに古典的なテーマかもしれませんが、だからこそ、操作の余地も大きいなど、何かと問題となりやすいテーマです。ですから、棚卸資産の実在性という視点とともに、在庫管理体制の状況についても意識すれば、より財務デュー・デリジェンスを活用することができます。

②棚卸資産の評価の妥当性

売掛債権と同様に、棚卸資産についても、修正仕訳が出やすいのは、評価の妥当性の側面といえます。すわなち、不良在庫の問題です。販売可能性が乏しい在庫については、もはや価値が毀損していると考え、本来であれば評価損を計上すべきなのですが、税法基準で決算を行っている多くの企業はそのような健全な会計処理を行うことはしないのが通例です。したがって、財務デュー・デリジェンスにおいては、対象会社が保有する棚卸資産の滞留状況を把握するとともに、今後の販売可能性に鑑みて、適切に評価を行った上で、必要とあらば評価損の計上を行わなければならないのです。

基本的な考え方は、売掛債権の場合と大きくは変わりません。つまり、保有する棚卸資産の特徴や件数などを踏まえて、滞留在庫が極めて限定的であるような場合には、個別に将来の販売可能性を検討した上で、評価減するものとしないものを区別するという方法も考えられます。その一方で、棚卸資産のボリュームが大きく、品目も多岐にわたる場合などは、一定の評価ルールを設定して在庫の評価減を行っていくのが一般的です。

ここで考えなければならないテーマは大きく2つです。まずは、棚卸資産の滞留状況をシステム上、適切に把握できるかどうかです。そもそもより所とする情報が正確でなければ、その後にどのような基準を設定しても適切な評価を行うことはできません。たとえば、実際に販売されて出庫されたわけではなく、単に倉庫間移動があっただけなのに、出庫データとして認識されてしまい、システム上は滞留在庫から除外されてしまうようなことがあれば、そのデータを信頼して滞留在庫を集計したとしても、実態とは乖離してしまうリスクが相当程度あるといえます。

その意味でも実在性のところで述べた在庫管理体制の把握というのは重要になってくるのです。まずは、このようなデータの信頼性を十分に吟味することによって、滞留データとしてそのまま使用できるのか、それとも不備があるために別の方法を用いるか、または何かしらの仮定を置かなければならないのか等の判断につながっていくことになります。これが1つ目のポイントです。

2つ目のポイントは妥当な在庫評価ルールは何かという点です。信頼性に足る滞留在庫データを入手したとして、どのような基準に基づいて棚卸資産評価を行うのが適切なのか、ここを決めていく必要があります。これは取り扱う商品や製品の種類、買主サイドの方針などによって大きく変わってくるところです。わかりやすいのは、商品や製品の特性でしょう。視点としては、物的な寿命と経済的な寿命の両方の視点を持っておく必要があります。たとえば、物的に消費期限が決まっている製品の場合、それよりも長いスパンで評価することは不適切です。また、仮に物的な消費期限はまだだいぶ先であるとしても、経済的に流行遅れになってしまった等の理由で不良在庫化するケースも多いでしょう。一義的にはこのような商製品の特性を踏まえて、一定の在庫評価ルールを設定することになります。

なお、ここで考えておきたいのが、買主サイドの在庫評価方針です。最終的に買収して連結財務諸表に取り込むことを考えると、買主サイドにおける在庫評価ルールとある程度整合性を持たせておくことが望ましい場合もあるのです。まったく異業種の企業を買収する場合などは、あまりナーバスになる必要はないかもしれませんが、同業種の企業を買収する場合で、商製品の内容も似通ったものである場合などは、同じようなものを取り扱っているのにも関わらず、評価ルールが両者で整合しないのは、不適切とみなされる可能性もあるため、そのような場合においては、事前に買主サイドの評価方針を踏まえた上で、財務デュー・デリジェンスを行うのが効率的な場合もあります。やはり、買主としても積極的に財務デュー・デリジェンスのプロセスに関わっておくのが望ましいということです。

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