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財務報告書(事業の概況)

財務報告書(事業の概況)

(1)将来事業計画の基礎となる過去情報の分析

買収価額を決定する上で重要となる企業評価の手法には様々なものがありますが、昨今において主流になっている評価手法のひとつにDCF方式があります。対象企業が将来獲得するであろうキャッシュ・フローの割引現在価値として企業評価額を算定する手法で、対象企業の正常収益力を前提とした事業計画に基づいて企業評価を行います。

このような評価手法を前提とする場合、根拠となる事業計画の合理性の検証が極めて重要な手続きとなります。将来事業計画が妥当なものであるかどうかを検証するためには、そもそもどのようなビジネスモデルなのかを理解するとともに、足下の正常収益力を把握するために、過去の業績についての分析を行うことが必須となります。これらを経て初めて、過去からの延長線上にある将来計画の妥当性について評価を行うことができるのです。事業自体のデュー・デリジェンスについては、事業デュー・デリジェンスの範囲とされるのが一般的ですが、財務デュー・デリジェンスでは、その基礎となる過去情報に基づく足下の正常収益力の把握を目的とした分析を行うのが一般的です。

(2)将来事業計画の分析におけるポイント

① ストーリーと有機的に結びついた数字

将来事業計画の合理性を主張するために大切なのが数字とストーリーを結びつけて説明する能力です。単純にいくら増えた減った、何パーセント動いた、というだけでは単なる数字遊びに終わってしまいます。数字はあくまでも結果であり、先立つものとして会社の事業活動があって、そこに様々な要因が折り重なった結果として数字が導き出されることを忘れてはいけません。数字の裏では様々な因果が複雑に絡み合っていますから、数字の分析や説明をする際には、結果としての数字を、様々な要素に因数分解できる必要があるのです。

売上高について考えてみただけでも、様々な因数分解が考えられます。事業別、地域別、製品別、顧客別などといった形でブレークダウンすることは容易に想像がつきますし、それぞれのカテゴリーごとに増減の説明をする際にも、金額としての増減だけでなく、数量と単価という側面に分解することが可能です。また、そこに外部経営環境、内部経営環境の変化や、経営上の施策の効果といった要因を加味することができれば、より数字とストーリーが密接につながるわけです。

たとえば、単年度計画で大幅な増収を見込んでおり、その合理性を検証しなければならないケースを考えます。単純に総額としての目標数値であるとか、最近業績が伸びてきているから、といった理由では、営業目標としては成立し得ても、買収価額の評価を適切に行うための基礎情報としては不適格といえるでしょう。その一方で、たとえば、「増収の最も大きな要因は、製品Aの大幅な売上増によるものである。この製品はここのところマーケットが急激に拡大しており、直近期においても大幅な伸びをみせている。この活況は当面は継続するというのが業界におけるコンセンサスである。ただし、価格面に関しては下落の圧力が強いため、計画においても四半期ごとに1%ずつ単価の引き下げが織り込まれている。一方、数量面については外部のシンクタンクのレポート等による伸び率なども参考にしながら、営業体制の拡充なども考慮して、20%程度の伸びが見込まれている。実際、直近のオーダーをみても同等の伸びを見せている。これらを踏まえて、単価下落の影響はあるものの、単価下落を補ってあまりある数量の伸びによって大幅な増収が見込まれているものである。その他の増収要因としては......(以下、略)」といった説明がスムーズになされて、その裏付けもしっかりととれていれば、合理的な計画として採用しやすいといえます。

もちろん、説明の中には将来の不確実性に関わる事項も含まれていますが、そのことを言い出すと何も先のことは予測できないという話になってしまいますので、あくまでも現時点で得られるありとあらゆる情報を徹底的に分析した結果として、現時点における最前の見積りといえるのかどうか、ここが最も大切な点です。

② 過去・現在・将来の連続性

もう1つのポイントが、過去・現在・将来の連続性です。将来の事業計画の合理性を検討する際に、はじめから将来のことを考えるのはナンセンスとえいます。将来のことを考えるからこそ、まず大事にしたいのが足もとの収益力です。過去そして現在があるからこそ将来があるのです。

はじめに、過去はどうだったのか?を振り返ります。その上で、現在はどうなのか?これらを、その時々の経営環境も踏まえながら分析し、その延長線上に浮かんでくる将来、また今後の経営環境の変化に関する見通し、変化に対応するための経営戦略などをすべて考慮しきることではじめて将来事業計画の合理性について判断が下せるのです。

まずは過去の業績の把握、分析です。過去3期間~5期間程度の業績推移を並べてみて、なぜそのようなトレンドとなっているのかについて徹底的に分析します。その時々の経営環境や会社がとった施策等と、その結果としての業績推移との因果関係をできる限り把握するようにします。もちろん、将来は不確実なものですから、前提条件が変わることもあり、過去の経験どおりに進まないことも多いのですが、将来計画を判断する上でのスタートラインとして重要な要素であることに間違いはありません。

足もとの収益力に関する分析が終わったら、次はいよいよ将来計画の分析です。DCF方式では3年や5年といった複数年の将来計画を利用しますが、先になればなるほど不確実性は増してくるため、単年度計画について徹底的な分析を行います。過去のトレンドや直近期の実績と比較して何が変わるのか、をはじめに考えます。売上高について様々な視点から区分をした上で、それぞれ数量面と単価面に因数分解して、経営環境の変化も踏まえながらどういうことがいえるのか、費用面については、変動費と固定費に分解して、変動費についてはどのような前提条件で売上高の変動に連動しているのか、固定費については人員採用計画や定期的な修繕計画の状況、固定費水準の合理性、突発的な費用の発生などが見込まれるのか、といった観点から、事業活動と数字がきちんとつながっているのかを検討するのです。

単年度計画について徹底的に詰めることができれば、その後の年度の計画についてはある程度その延長線上として考えることができます。もちろん、因数分解の発想は必要となりますが、一定のトレンドとして説明がつけば十分です。

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