Skip to content(本文へジャンプ)

  1. HOME
  2. M&Aの知識
  3. 実際に発見された問題点
  4. 雇用契約の引継

雇用契約の引継

前提知識

事業譲渡によって取引の対象となるのは、通常は資産のみである。
契約関係は、原則として相手方の同意なくして譲渡できない。

DD実施前

  • 事業譲渡により企業の一部の事業を買い取る予定

DD実施後

  • 譲渡される事業の従業員が賃上げ交渉で会社と揉めた事実が発覚
  • 当該従業員が転籍に応じないおそれがある

対応

  • 事業譲渡の場合には、従業員と個別に雇用契約を締結しなければならない。
  • 会社分割であれば、労働契約承継法3条により雇用契約が自動的に移転するためストラクチャー変更を行う

ワンポイントアドバイス

事業の規模、移転すべき契約数や税制上のメリット(繰越欠損等)などを勘案したうえで、M&Aストラクチャーの検討を行うべきである。

詳細

M&Aでは、買収対象会社の全部を譲り受ける場合ばかりではなく、事業の一部のみを売買するということもある。
法律用語でいうと事業譲渡、会計用語でいうとアセット・ディール、カーブアウトなどと言われている。

事業譲渡によって取引の対象となるのは、通常は資産のみである。
一般的に、契約は相手方の同意なくして契約当事者の地位を変更することができない。

たとえば、資力があることを見越してお金を貸したのに、債務者の地位を一方的に無資力者に変更できるとすれば、貸主は債権を回収できなくなってしまう。
このことからも、契約上の地位の移転には原則として相手方の同意が必要となることは明らかだろう。

そのため、事業譲渡を行う場合には、その事業に付随する全ての契約の相手方の同意書を取得することになる。
これは、引き継ぐ事業の大きさによっては、大変な作業となる。
また、主要な契約において、相手方当事者の同意が得られないこととなれば、M&A自体が頓挫することにもなりかねない。
このような理由により、比較的規模の大きい事業を事業譲渡の形で処分することは、売主が難色を示すことが多い。

もっとも、買主からしてみれば、原則として資産のみを譲り受けることになるので、仮に簿外債務が存在する事業であったとしても、当該簿外債務は引き継がれないというメリットも存在する。
その他諸々のメリット・デメリットがあるため、事業の規模、移転すべき契約数や税制上のメリット(繰越欠損等)などを勘案したうえで、アセット・ディールを行うか、ストック・ディール(株式譲渡等)を行うかにつきストラクチャー選択を行うことになる。

以前、事業の一部を譲り受けるに際して、事業譲渡をストラクチャーの前提として協議を行っていた案件がある。
しかし、デューデリジェンスの過程で、当該事業に従事している従業員数名が以前賃上げ交渉を巡り、買収先会社と揉めたという事実が発覚した。
経営者インタビューの結果でも、仮に事業譲渡に際して新たに買主の会社との間で雇用契約を巻き直すのであれば、必ず賃金を巡り揉めることが予測されるとのことだった。
とはいえ、経営者の話では、当該従業員は当該事業において必須の人材であり、これらの従業員が辞めることになれば、当該事業が回らないことが予測された。

上記のとおり、雇用契約も労働者の承諾を得なければ使用者はその地位を第三者に譲渡することができない(民法625条1項)。
ところが、会社分割という組織法上のストラクチャーを用いれば、譲渡対象事業に主として従事する労働者については、原則として通知することにより一方的に雇用契約を移転できる(労働契約承継法3条)。

そのため、このケースでは事業譲渡ではなく、会社分割を用いることとなった。
もっとも、会社分割によって雇用契約が移転したとしても、移転された従業員が辞職してしまうおそれも存在した。
そこで、そのような事態が生じた際には、別途売主が保証を行う旨をM&A契約に盛り込んだ上でクロージングとなった。

  • 全国対応、20名以上の会計士・試験合格者、20名以上の弁護士が対応M&Aを検討している貴社は、今すぐ監査法人アヴァンティア・みらい総合法律事務所へ初回見積・簡易相談無料です。
  • 電話でのお問い合わせはこちらまで 03-5226-5755 窓口 みらい総合法律事務所 受付時間: 平日 9:30~18:00
  • メール・お電話でのお問い合わせはこちらから
  • 「日本経済新聞」に掲載されました

著書

  • 公認会計士と弁護士が教える「専門家を使いこなす」ためのM&Aの知識と実務の勘所
  • 公認会計士と弁護士が教える
    「専門家を使いこなす」ためのM&Aの知識と実務の勘所

ページの先頭へ