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譲渡無効

前提知識

原則として有効に株式を譲渡するためには、株券の交付が必要となる(会社法128条)。
実際に株券を発行している会社は、ほとんど存在しない。

DD実施前

  • 株式100%を買収する予定だった
  • 売主は、株式譲渡は適切に行われていると説明していた

DD実施後

  • 株券発行会社であるにもかかわらず一度も株券が発行されていないことが発覚
  • 当初の発起人の所在が分からず30%の株式を取得できない事態に陥る

対応

  • M&A自体がご破算になりそうになったものの、売主が大幅な買収価格の減額を行い、70%の株式のみ売却する方向でクロージング

ワンポイントアドバイス

会社を買ったと思ったら、実は何も買っていなかったという最悪の事態を避けるために、最低限でも株式譲渡の点については法務デューデリジェンスを入れておくべきである。

詳細

買収先の会社の全株式を購入したと考えていたところ、実はその購入が無効だったとしたらどうだろう。

そんなことは滅多にないだろうと思うかもしれないが、株式の譲渡が無効であるというケースは、法務デューデリジェンスにおいて最も典型的に発見される問題点の一つである。

会社法第128条では、以下のように定められている。

  1. 株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。
    ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。
  2. 株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。

つまり、株券発行会社においては、株券の譲渡がなければ株式譲渡の効力が生じないのである。
株券発行会社であるか否かは、その会社の登記簿謄本を見れば一目瞭然となる。
株券発行会社であれば、登記簿謄本に株券発行会社である旨が明記されているからである(株券不発行会社ではその旨の記載がない)。

ちなみに、平成16年以前の旧商法では、全ての会社が株券発行会社であることが定められていた。
平成16年に会社法が施行されて株券不発行会社制度が採用されたが、その当時に定款において株券を発行しない旨の定めがない限り、その当時存在していた会社は、会社法施行後も株券発行会社であり続けることとされている(整備76条4項)。
その結果、現存する会社の大多数が株券発行会社のままとなっている(上場会社は例外)。

ところが、多くの非上場会社では株券を一度も発行したことがないのが一般的である。
そして、株式譲渡の際には、株式譲渡契約書のみ交わすだけで、発行していない株券の譲渡は当然のことながら行われない。
上記会社法第128条2項を見れば明らかのように、株券発行前に行われた譲渡は全て無効なのである。

この問題は非常に多くの事例で見られるのだが、典型的な事例を一つ上げる。

社長が株式の60%、社長の妻と息子がそれぞれ20%ずつ株式を保有している会社が存在した。
この持株割合は、社長の説明と税務申告書の同族会社の判定欄に記載に基づいていた。
買収に当たっては、100%の株式が譲渡される予定であった。

ところが、原始定款に遡って、株式譲渡の流れを追ってみたところ、この会社は3名が共同して出資することで設立されたものであり、当初の持ち株割合は現社長40%、その他の発起人各30%という出資割合であることが判明した。
その後、株式譲渡が繰り返され、結果として現在の株主に落ち着いたという経緯を辿っていた。この会社は株券発行会社であるが、株券は現在に至るまで発行されたことはなかった。
そのため、過去の株式譲渡は全て無効であり、現在の株主は、設立当初の社長40%、発起人2名30%ずつという状態のままなのである。

このような場合、買主が100%の株式を取得するためには、原則として株券を発行したうえ、過去の株式譲渡者全員から署名押印を取得する必要がある。
しかし、発起人2名の内1名だけがどうしても所在を確認することができず、最大でも社長の40%の株式と発起人1名の30%の合計70%しか適法に買い受けることができないことになった。
買主としては、100%の株式取得に拘っていたため、当該M&Aは一旦破断しかけたが、売主が大幅な買収価格の減額を行うことで、70%の株式のみ購入する方向でクロージングした。

会社を買ったと思ったら、実は何も買っていなかったという最悪の事態を避けるために、最低限でも株式譲渡の点については法務デューデリジェンスを入れておくべきだろう。

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  • 「日本経済新聞」に掲載されました

著書

  • 公認会計士と弁護士が教える「専門家を使いこなす」ためのM&Aの知識と実務の勘所
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    「専門家を使いこなす」ためのM&Aの知識と実務の勘所

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